Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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カインのまつえい

カインの末裔 クララの出家

有島 武郎

Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme

Aozora Bunko

妻が黙ったまま立留ったので、彼れはそれが松川農場の事務所である事を知った。ほんとうをいうと彼れは始めからこの建物がそれにちがいないと思っていたが、這入るのがいやなばかりに知らんふりをして通りぬけてしまったのだ。もう進退窮った。彼れは道の向側の立樹の幹に馬を繋いで、燕麦と雑草とを切りこんだ亜麻袋を鞍輪からほどいて馬の口にあてがった。ぼりりぼりりという歯ぎれのいい音がすぐ聞こえ出した。彼れと妻とはまた道を横切って、事務所の入口の所まで来た。そこで二人は不安らしく顔を見合わせた。妻がぎごちなそうに手を挙げて髪をいじっている間に彼れは思い切って半分ガラスになっている引戸を開けた。滑車がけたたましい音をたてて鉄の溝を滑った。がたぴしする戸ばかりをあつかい慣れている彼れの手の力があまったのだ。妻がぎょっとするはずみに背の赤坊も眼を覚して泣き出した。帳場にいた二人の男は飛び上らんばかりに驚いてこちらを見た。そこには彼れと妻とが泣く赤坊の始末もせずにのそりと突立っていた。

「何んだ手前たちは、戸を開けっぱなしにしくさって風が吹き込むでねえか。這入るのなら早く這入って来う」