Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.444 Zeichen · 30 Bildschirme
……ほんとうに、こんな暑い日に、よくやって来ておくれだった。……なんだろう、きょうは、ゆっくりして行っていいのだろう」
「ええ、べつに用事ではなかったのですけど……」
胸の中に臆心があるので、いつものようなのんきな調子が出て来ない。
「あの……、あまり、ごぶさたしましたから、……きょうは、ちょっと、お顔を見におうかがいしましたの」
相手がなんともいわないのに、あわてて、じぶんから、
「ほんとうよ」
と、つけ足して、心の中で赤面した。
もちろん、疑うようすなどはなく、ほくほくと眼を無くして、
「そうかい、そうかい。どうか、ゆっくりしていってちょうだい」
女中たちが廊下の端に固まって、なにかコソコソいってるのへ聴耳を立てて、
「こらこら、なんだい、そんなところでコソコソと……。どうも、躾の悪い家でねえ、あんなところで垣のぞきをしている。……なにしろ、この家じゃ、あなたの評判がたいへんなんだから、新しく来た女中どもがあなたを見たがって、それで、あんなことをしてるのさ。まあまあ、すこし見物させてやんなさい」
その自慢らしい顔といったらないのである。
キャラコさんが、なにより懼れていたのは、母堂のこの底知れない愛情だった。