Japanische Klassiker mit Furigana
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セメントだるのなかのてがみ
セメント樽の中の手紙
葉山 嘉樹
Lesen Sie セメント樽の中の手紙 (セメントだるのなかのてがみ) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.538 Zeichen · 6 Bildschirme
箱は軽かった。
「軽い処を見ると、金も入っていねえようだな」
彼は、考える間もなく次の樽を空け、次の桝を量らねばならなかった。
ミキサーはやがて空廻りを始めた。コンクリがすんで終業時間になった。
彼は、ミキサーに引いてあるゴムホースの水で、一と先ず顔や手を洗った。そして弁当箱を首に巻きつけて、一杯飲んで食うことを専門に考えながら、彼の長屋へ帰って行った。発電所は八分通り出来上っていた。夕暗に聳える恵那山は真っ白に雪を被っていた。汗ばんだ体は、急に凍えるように冷たさを感じ始めた。彼の通る足下では木曾川の水が白く泡を噛んで、吠えていた。
「チェッ! やり切れねえなあ、嬶は又腹を膨らかしやがったし、……」彼はウヨウヨしている子供のことや、又此寒さを目がけて産れる子供のことや、滅茶苦茶に産む嬶の事を考えると、全くがっかりしてしまった。
「一円九十銭の日当の中から、日に、五十銭の米を二升食われて、九十銭で着たり、住んだり、箆棒奴! どうして飲めるんだい!」
が、フト彼は丼の中にある小箱の事を思い出した。彼は箱についてるセメントを、ズボンの尻でこすった。
箱には何にも書いてなかった。