Japanische Klassiker mit Furigana
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プウルのかたわらで
プウルの傍で
Lesen Sie プウルの傍で (プウルのかたわらで) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.843 Zeichen · 34 Bildschirme
それから、はじめて、父は、怒りにふるえた声で、どもりながら叫んだ。
「何ということをするんだ。折角、買ってきてやったのに。」
三造は黙っていた。父はもう一度繰返した。息子はみにくく顔をゆがめながら強いて笑った。
「一度貰った以上、それからはどう処分しようと、僕の勝手じゃありませんか。」
激怒が再び彼の父を執えた。父は、その拳がいたくなる位、はげしく息子の頭を打った。打っている中に次第に病的な兇暴さが加ってくるのが、打たれている三造にまで感じられた。彼は、しかし、少しも防ごうとはしなかった。むしろ打たれるのを楽しむような気持さえ何処かにあった。彼は、それよりも、父が、彼の猫を蹴とばしたことに憤りを感じていた。明らかに、これは猫の関係したことではないのだ。新しい母は、あっけにとられて、止めるのも忘れていた。老いた女中も同様であった。猫は庭に逃出し、妹は涙を浮かべてふるえていた。
やがて、彼の父は、その手を止めた。そしてしばらく茫然と、三造を見下して立っていた。丁度夢からさめたような恰好であった。三造は、わざと冷然と、父の顔を見上げた。その視線にあうと、父はあきらかに狼狽の色を見せて、眼を外らした。