Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さんにんのほうもんしゃ
三人の訪問者
島崎 藤村
Lesen Sie 三人の訪問者 (さんにんのほうもんしゃ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.196 Zeichen · 7 Bildschirme
私の側へ来てささやいて居たのは、たしかに武蔵野の「冬」だった。
「冬」はそれから毎年のように訪ねて来たが、麻生の方で冬籠りするように成ってからは一層この訪問者を見直すようになった。「冬」で思出す。かつて信濃で逢った「冬」は私に取って一番親しみが深い。毎年五ヵ月の長い間も私は「冬」と一緒に暮らした。けれどもあの山の上では一切のものは皆な潜み隠れてしまって、ついぞ私は「冬」の笑顔というものを見たこともなかった。十一月の上旬といえば早や山々へは初雪が来た。そして暗く寂しい雪空に、日のめを仰ぐことも稀な頃になると浅間のけぶりも隠れて見えなかった。千曲川の流れですら氷に閉された。私の周囲には降りつもる深い溶けない一面の雪があるばかりであった。その雪は私の旧い住居の庭をも埋めた。どうかすると北向の縁側よりも庭の雪の方が高かった。軒に垂れる剣のような氷柱の長さは二尺にも三尺にも及んだ。長い寒い夜なぞは凍み裂ける部屋の柱の音を聞きながら、唯もう穴に隠れる虫のようにちいさくなって居た。
この「冬」が私には先入主になってしまった。私はあの山の上で七度も「冬」を迎えた。