Japanische Klassiker mit Furigana
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さんがいばんれいとう
三界万霊塔
久生 十蘭
Lesen Sie 三界万霊塔 (さんがいばんれいとう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.716 Zeichen · 39 Bildschirme
前後の事情から推すと、船長たちは船団へ帰る途中、ワラ族に襲撃されて部落へ連れ去られたと思うほかはない。事務長は礼をいって、沈痛な顔で母船へひきあげて行った。午後になると、船団のラガーが貝床を離れて全部環礁の沖へ集まって来、二隻のカッターを出して綿密にワラ族の入江を偵察しはじめた。
ワラ族のいる入江はマングローブの密林の中へ水路が迷路のように深く複雑に入りこみ、行きどまりが狭い渚のある円形の密閉湾になっている。水路は中帆のスクゥナーがようやく一艘通れるほどの幅で、いくどもうねり曲るので、先になにがあるのか見通しがつかない。魚群が長く突きだした魚柵について進んでいるうちに、いつの間にかその先の魚袋へ入りこんでいるといったぐあいで、自然らしい見せかけになっているが、よく観察すると、どことなく巧みのあとが感じられる。渚の向うは林で、一筋、細い道をあけ急に高まり、密々と樹叢に蔽われた斜面が円形劇場のようにグルリと湾の周囲をとりまいているので、ワラ族のほうは、密林のどの位置からでも湾の中の船の動静を見おろすことが出来るようになっている。こういう危険な状況を知ったら無鉄砲なことはできないはずだが、船団は夜のうちに入江の沖で展開し、払暁を期して入江へ突入するつもりらしく見えた。