Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せけんし

世間師

小栗 風葉

Lesen Sie 世間師 (せけんし) von 小栗 風葉 (おぐりふうよう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.390 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

」

言いおいて、そのまま車夫は行ってしまう。私はじっとそれを見送っていたが、その提灯の影も見えなくなり、その車の音も聞えなくなってしまうと、きゅうにたまらなく寂しくなった。そこで駈けだすようにして、車夫に教わったその横町へ入ると、なるほど山本屋という軒行灯が目に入った。

貝殻を敷いた細い穢い横町で、貧民窟とでもいいそうな家並だ。山本屋の門には火屋なしのカンテラを点して、三十五六の棒手振らしい男が、荷籠を下ろして、売れ残りの野菜物に水を与れていた。私は泊り客かと思ったら、後でこの家の亭主と知れた。

「泊めてもらいたいんですが……」と私は門口から言った。

すると、三十近くの痩繊の、目の鋭い無愛相な上さんが框ぎわへ立ってきて、まず私の姿をジロジロ眺めたものだ。そうして懐手をしたまま、

「お上り。」と一言言って、頤を杓った。

頤で杓った所には、猿階子が掛っていて、上り框から(というよりは、むしろ土間から)すぐ二階へ上がるようになっている。私は古草鞋や古下駄の蹈返された土間に迷々していると、上さんがまた、

「お上り。」

「は。」と答えた機で、私はつと下駄を脱捨てて猿階子に取着こうとすると、