Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme
もう五刻をまわったろう。
魔の淵のようなしずけさの底に、闇黒とともに這いよる夜寒の気を、お艶は薄着の肩にふせぐ術もなく、じっと動かないお藤の凝視に射すくめられた。
酒を呼ぶ離庵の声が手にとるよう……堀沿いの代地を流す按摩の笛が、風に乗って聞こえてくる。
膝を進めたお藤は、横に手を突いて行燈のかげをのぞいた。
「お艶さん、お前、かわいそうにすこし痩せたねえ。おうお! むりもないとも。世間の苦労をひとりで集めたような――あたしゃいつも与の公なんかに言っていますのさ。ほんとに納戸の娘さんはお気の毒だって」
積もる日の辛苦に、たださえ気の弱いお艶、筋ならぬ人の慰め言と空耳にきいても、つい身につまされて熱い涙の一滴に……ややもすれば頬を濡らすのだった。
そこをお藤がすり寄って、
「ねえ、お前さんあたしを恨んでおいでだろうねえ? いいえさ、そりゃ怨まれてもしようがないけれど、実あね、あたしも当家の殿様に一杯食わされた組でね、言わばまあお前さんとは同じ土舟の乗合いさ。これも何かの御縁だろうよ。こう考えて、お前さんをほっといちゃあ今日様にすまないのさ、これから力になったりなられたり、なんてわけでね。