Japanische Klassiker mit Furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.698 Zeichen · 42 Bildschirme
……お君や兄様に問うてみや、生臭を上げたら悪かろうか、好物の鶫もあるのじゃがと」
「兄様、あなた、お精進でなくてはいけませんの」
「いや、そんなことはない。……鶫、結構。ついでに、その柿の葉鮨も貰おう」
「まあ、嬉しいこと……そんならそうしましょう。長い旅でお疲れでしょうから、すこし、横におなりになったら、どう」
「じゃ、そうしようか」
「おう、おう、そうおしな、そうおしな」
そのうちに支度ができて、婿取りの振舞ほどに古風な膳椀を押並べ、老人が二人、高砂の尉と姥のようにチンと坐って、三十郎の顔を見れど見倦ぬというぐあいに、ほれ、あの飯の喰べぐあい、箸のせせりぐあい、ありし日にそのままじゃと、しぐさのひとつひとつに眼を見合せ、どうしようぞという風に切なげに頷き合うのである。
君子は二人の老人のうしろにお盆を持って控えて、これも吸取るような眼つきで三十郎の顔を見詰めているので、そのうちに三十郎は、自分は松久三十郎なぞではなくて、冥土の便宜で、あの世から三人の肉親を慕ってはるばるこの世へ戻って来た関原弥之助自身なのかも知れないというような不思議な気持になって来た。