Japanische Klassiker mit Furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.698 Zeichen · 42 Bildschirme
ベルナアルさんは憐みを乞うような眼つきでチラと私の顔を見上げた。
「ええ、そうなんです。何という情けないことでしょう」
ベルナアルさんの声は震えていた。
私は、われともなく院長さんの口真似をした。
「ベルナアルさん、ほんとうに、あなたというひとは……」
「ああ、ほんとうに私という人間は……」
「それにしても、あなたはどんなおしゃべりをしたのですか。困ったひとだ」
「……私は『今日藪蔭で今年最初の雛菊を見つけた』と大きな声で叫んだのです」
「ああ、そんなことはどうだっていいのに。どうしてまた藪蔭の雛菊なぞについておしゃべりをする気になったのですか」
ベルナアルさんは、羞恥の色で顔を染めながら、
「藪蔭で最初の雛菊を見つけたとき、あまり嬉しくてこの溢れるような喜びを誰かに分けてやりたくてたまらなくなったのです。……私は舌を押さえつけようと思って力の限り祈りました。でも、やっぱりだめだったのです。私は修道院じゅうを走り廻って、『沢の藪で雛菊を一輪見つけた』と叫んで歩いたのです。まるで雷のような声で。……私としては、どうすることも出来なかったのです」
「まあ、何という馬鹿なことを……」