Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちをさす
乳を刺す
邦枝 完二
Lesen Sie 乳を刺す (ちちをさす) von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.474 Zeichen · 35 Bildschirme
今宵も将軍家慶は、愛妾のお光の方と共にお成りとあって、お光の方に仕えている源兵衛の娘由利も、その行列に加わったのであるが、日ごろの勤め振りにめでて、途中から実家へ帰ることを許されたとの報せが、すでにきのうの朝、伊吹屋一家を、有頂天にさせていたのだった。
待ちかねた夫婦の前へ、いきなり闇の中から現われた常吉の声は弾んでいた。
「旦那様。おかみさんもお喜びなさいまし」
「おお、常吉か。お由利はどうした?」
「へい。今し方お行列が、遠藤様へお着きになりましたので、お嬢様にもお暇が出ました。今、あすこへおいでなさいますが、お客様が御一しょだと仰しゃいますので、一っ走り、お先へまいりました」
そこへ、お春の持った提灯が近付いて、その灯りの中に、くっきりお由利の顔が浮かんで見えた。
文金の高島田に、にっこりとした御殿女中の拵えであるが、夏の名残りの化粧の美しさは、わが娘ながら、まぶしいばかりにつややかであった。
「おお、お由利……」
「よくまア帰って来ておくれだねえ」
「お父さん、おっ母さん。お達者で……」
連れ立って帰って来た朋輩らしい女中や、お茶坊主らしい人をそのままにして、小走りに進み寄った由利は、両親に手を執られて、胸が一杯になったのであろう。