Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうしてああ卑劣なんだろう!」

伸子は黙って、息をひそめるこころもちでじっとそういう母のそぶりを見つめた。

「あんなことをいっておきながら、いざとなると、逃げだして……」

あんなことということが、どういう越智の話だったのか、伸子はきいていなかった。しかし、推測された。そのとき越智がいったことは、少くとも多計代にとって、越智と結婚するしかないと思わせた、そのような内容だったのだ。

「前崎から、かえっていらしたことがあったの?」

越智との間に、いつそういう決裂がもたらされたのだろう。

「いいえ、帰っちゃ来ないよ」

「…………」

では、多計代は伸子が想像したよりも遙かに激しく行動した。越智をさけて前崎の家へ行き、そこで考えもまとめて来るのかと思っていた伸子の推察よりも、多計代の燃えかたはずっと強烈だった。伸子に、越智との結婚について話した、おそらく次の日かその次の日に多計代はまた越智に会ったにちがいない。多分、人のいなくなった午後のおそいがらんとした研究室で。――そういう建物の中のほこりっぽい無味乾燥な室で、華やかに装った多計代が、においと熱とを放散させながら、縁なし眼鏡を顔の上に光らせて今は臆病にしりごみしている越智に迫ってゆく光景を思いやると、伸子は涙がにじんだ。