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Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme

Aozora Bunko

高子が室に居ようが居まいが、それを少しも気にかけていないらしかった。彼女が何か云うと、ただ黙って首肯いた。承諾というよりも寧ろ機械的の反応らしかった。服薬や湿布や検温や検脈に、惜しむ所もなく身体をうち任した。重湯を飲む時に、「少し熱うございますか。」と問われると、「うむ。」と返事をした。「丁度宜しいでしょう。」と問われると、やはり「うむ。」と返事をした。彼女の一寸した手不調から、吸飲の水が口のはたにこぼれかかっても、彼は黙っていた。彼女の言葉や彼女の為す凡ては、宛も彼自身の一部であるかのようだった。それらを彼は殆んど無意識的に受け容れていた。

然し信子に対して、彼の精神は過敏な反応を現わした。彼は一々彼女の言葉尻を捉えた。彼女の一挙一動を、執拗な眼で見守った。彼女が黙っていると、「何を考えているんだ。」と尋ねた。彼女が少し長く口を利くと、「僕を少し静にさしといてくれ。」と云った。暫くすると、彼女の方にくるりと頭を向けて、「何を澄し込んでるんだ。」と怒鳴った。彼女は種々なだめた。高子も側から口を出した。然し彼は彼女を追求して止めなかった。彼女が泣き出すと、彼は急に口を噤んで眼を閉じた。