Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme
眼には涙を一杯ためていた。しまいには、木下君を呼んでくれと云ってきかなかった。木下が不在であると、戻ってくるまでは一言も口を利かないでじっとしていた。
木下は病室をぬけ出すことに苦心した。病に衰えて信頼しきっている友の顔を眺めていると、彼は悲痛な情と自責の念とが胸にこみ上げてきて、頭脳が激し態度が荒立ってくるのを覚えた。そして、それが病人の安静を乱すことを恐れた。彼は種々な口実を探した。煙草を吸ってくる、飯を食ってくる、手紙を書いてくる、手を洗ってくる、便所に行ってくる、――所用のため外出するとは云い得なかった、――然しそれらの口実は余り度々くり返すわけにはゆかなかった。ただ製作をするんだからという時だけ、啓介は快く、而も非常に淋しい顔をして、彼を許してやった。彼は画室に逃げて行った。
信子はよく、木下を呼びに、啓介から画室へ追いやられた。「お仕事中ですから。」と云っても、啓介はきかなかった。
「今頃室内で絵が描けるものか。」と啓介は云った。
信子は画室に馳け込んでいった。椅子にかけて深く考えに沈んでいる木下の腕に彼女は縋りついた。
「木下さん、また……。