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Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme

Aozora Bunko

婆やは早くから寝た。木下も、その日静かだった啓介の様子に少し安心して、早く床についた。

啓介は眼を覚していた。風の音に聞き入っていた。頭の調子がぴんと張りつめて、凡ての事象が冴え返っていた。

「信子!」と彼は呼んだ。

「はい。」

「木下君は?」

「もうお寝みなすったようですわ。」

暫く沈黙が続いた。

「信子!」と彼はまた呼んだ。

「はい。何か御用?」

「木下君を呼んでくれ。」

「でも、もう寝んでいらっしゃるから、明日になすったら。」

「いや今すぐに用があるんだ。話したいことがある。呼んでおいで!」

思いつめた鋭い光りが彼の眼に籠っていた。信子は高子と顔を見合した。そして躊躇した。「気に逆らわない方がいいかも知れません、」と高子は囁いた。

信子は木下を呼びに行った。木下は床にはいったまま眼を開いていた。彼は信子の姿を見ると、すぐに事情を直覚した。いきなり飛び起きて着物を着た。

「私何だか気掛りで……。」と信子は云った。

「大丈夫、安心していらっしゃい。」と答えて彼は彼女の手を握りしめた。

病室に行くと、啓介は逃げてゆく幻を追うように、天井の隅を見つめていた。二人がはいって来ても彼は視線を動かさなかった。