Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme
十
」
信子が突然声を搾って泣き出した。堪えていた気分が張り裂けると、嗚咽の声と涙とが止度なく送り出て来た。彼女は身を投げ出して泣き伏した。咽び上げる度に、束髪の櫛の宝石玉が、電気の光りに輝いた。木下は啓介の腕を捉えながら、その輝きを眺めた。
「僕の心は晴々としている。」と啓介は云った。「生き返ったようだ。遠くが見えてくる。」
その言葉は残忍な調子を帯びていた。信子はぴたりと泣き声を止めた。木下は云い知れぬ恐怖を感じた。彼は信子を呼び起そうとした。頭を上げる拍子に、髪の毛が垂れ下って眼にかぶさった。彼は頭を振ってそれを払いのけた。……その時、啓介は歯をくいしばって、踊るように両手を高く上げた。拳を握りしめていた。両の眼が寄っていた。軽い痙攣が襲った。
木下は彼を床に寝かした。上から両手を押えつけた。信子は看護婦を呼んだ。高子はすぐにやって来た。
痙攣が去ると、啓介はぼんやりあたりを見廻した。それから、うとうとと眠りに入った。足の先が冷えていた。婆やを起して、湯たんぽの湯を沸さした。三人は夜が明けるまで枕頭についていた。
十
軽い痙攣が明け方にも一度啓介を襲った。