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Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme

Aozora Bunko

啓介は徐ろに視線を移して、母の顔を一目見たが、ちらと瞬きをして、眼を外らした。

「啓介さん、私ですよ! 私が……。」雅子は声を喉につまらした。いきなり両手を顔に持っていって、その掌に顔を埋めた。室の中がしいんとなった。

「お母さん!」と啓介は低い声で囁くように云った。眼をつぶっていた。

落入るような沈黙が続いた。雅子はやがて、小さなハンケチを取出して、眼を拭いた。それから啓介の病床の裾の方を向いて、低く頭を下げ、誰にともなく云った。

「種々御世話様になりまして……。」

信子は益々低く頭を垂れて、襟に顔を埋めていた。木下はその様子を一寸顧みた。火鉢の上に身を屈めて、炭火をいじり初めた。よく熾った火を高く積み上げては、またそれを壊した。しまいには火箸の先で灰をかき廻した。

河村は病人の枕頭に廻って、容態表を覗き込んだ。

「なるほど、余りよくないね。」

雅子は床の間の机の上に並んでいる薬瓶に視線を据えていた。河村の言葉を聞くと急に眼を伏せた。

「心配することはありませんよ。」と彼女は云い出した。「何にも考えないで、静にしているんですよ。木下さんの御話では、病気もそうひどくはないそうですからね。