Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
Lesen Sie 人でなしの恋 (ひとでなしのこい) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.245 Zeichen · 33 Bildschirme
ガタガタと、落し戸を開く音がして、パッと明りがさし、雪洞を片手に、それでも足音を忍ばせて下りて来ましたのは、まごう方なき私の夫、そのあとに続く奴めと、いきまいて待てど暮せど、もうあの人は、蔵の大戸をガラガラと締めて、私の隠れている前を通り過ぎ、庭下駄の音が遠ざかっていったのに、女は下りて来る気勢もないのでございます。
蔵のことゆえ一方口で、窓はあっても、皆金網で張りつめてありますので、外に出口はない筈。それが、こんなに待っても、戸の開く気勢も見えぬのは、余りといえば不思議なことでございます。第一、門野が、そんな大切な女を一人あとに残して、立去る訳もありません。これはもしや、長い間の企らみで、蔵のどこかに、秘密な抜け穴でも拵えてあるのではなかろうか。そう思えば、真っ暗な穴の中を、恋に狂った女が、男にあいたさ一心で、怖わさも忘れ、ゴソゴソと匍っている景色が幻の様に目に浮かび、その幽かな物音さえも聞える様で、私は俄に、そんな闇の中に一人でいるのが怖わくなったのでございます。また夫が私のいないのを不審に思ってはと、それも気がかりなものですから、兎も角も、その晩は、それだけで、母屋の方へ引返すことにいたしました。