Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
Lesen Sie 人でなしの恋 (ひとでなしのこい) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.245 Zeichen · 33 Bildschirme
「嬉しうございます。あなたの様な美しい方に、あの御立派な奥様をさし置いて、それほどに思って頂くとは、私はまあ、何という果報者でしょう。嬉しうございますわ」
そして、極度に鋭敏になった私の耳は、女が門野の膝にでももたれたらしい気勢を感じるのでございます。……………………………………………………………………………………
まあ御想像なすっても下さいませ。私のその時の心持がどの様でございましたか。もし今の年でしたら、何の構うことがあるものですか、いきなり、戸を叩き破ってでも、二人のそばへ駈込んで、恨みつらみのありたけを、並べもしたでしょうけれど、何を申すにも、まだ小娘の当時では、とてもその様な勇気が出るものではございません。込み上げて来る悲しさを、袂の端で、じっと押えて、おろおろと、その場を立去りも得せず、死ぬる思いを続けたことでございます。
やがて、ハッと気がつきますと、ハタハタと、板の間を歩く音がして、誰かが落し戸の方へ近づいて参るのでございます。今ここで顔を合わせては、私にしましても、又先方にしましても、あんまり恥かしいことですから、私は急いで梯子段を下ると、蔵の外へ出て、その辺の暗闇へ、そっと身をひそめ、一つには、そうして女奴の顔をよく見覚えてやりましょうと、恨みに燃える目をみはったのでございます。