Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとのかお
人の顔
夢野 久作
Lesen Sie 人の顔 (ひとのかお) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.908 Zeichen · 12 Bildschirme
母親はだまって、チエ子の手をグングン引いてあるき出した。チエ子も一緒にチョコチョコ駈け出したが、暫くすると又、不意に口を利き出した。
「おかあさま……」
「……何ですか……」
「アノネ……おうちのお茶の間の壁が、こないだの地震の時に割れているでショ……ネ……ギザギザになって……あそこにどこかのオジサマやオバサマの顔があってよ。大きいのや小さいのや、いくつも並んで……ソウシテネ……ソウシテネ……また方々にいくつも人の顔があってよ。お隣りのお土蔵の壁だの、おうちの台所の天井だの、お向家の御門の板だの、梅の木の枝だの、木の葉の影法師だのをヨ――ク見ていると、いろんな人の顔に見えて来てよ。きょうお母様に見せていただいた活動のわるい王様でも、綺麗なお姉さまの顔でも、キットどこかにあってよ。明日になったら、あたしキット……アラ……お母さまチョット……あそこに……」
と云いさしてチエ子は又急に母親の手を引き止めた。
「……ホラ……あの電信柱の上に、小さな星がいくつも……ネ……ネ……いつもよくうちにいらっしゃる保険会社のオジサマの顔よ……お母様と仲よしの……ネ……」
母親はギックリしたように立ち竦んだ。