Japanische Klassiker mit Furigana
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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme
と思うと、眼下にひろがる大摺鉢地のなかを、なにか見えはせぬかと瞳を凝らしはじめる。
しかしそこは依然として、濛気と昆虫霧が渦まく灰色の海で、絶壁の数かぎりない罅も中途で消えてしまい、いったいどこが果でどこが底か――この大秘境を測ることさえ許されない。ただ枯れた幹をおとした旧根樹の、錯綜の根がゆらぐ間にみえるのだ。強靱な、ピラミッド型の根が幹を支えているうちに、幹は枯れ、地上に落ちたその残骸は、まるで谿いっぱいにもつれた蜘蛛糸をみるようであった。やがてその枯色も、鎖ざしはじめた昆虫霧にうっすらと霞んでしまったのである。――大秘境「悪魔の尿溜」はちらりと裾をみせ、それなり千古の神秘を人にみせることをしなかった。
三人はしばらく感慨ぶかげに立っていた。しかし気がつくと、その格闘のまま、ヤンとドドの姿が消えてしまっているのだ。たぶん、ひっ組んだまま陥没地に落ちたのだろうと、マヌエラは気もそぞろであったが、やがて紅い蔓花で花環を編んで、じぶんを救おうとして死んで故郷へもどったドドのために、接吻とともに底しれぬ墓へ投げこんだ。
そうして、歯がぬけたような淋しさが来たが、また陥没がはじまりそうなので此処を引きあげねばならなかった。