Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme

Aozora Bunko

狂人の無電か

のまえに立っているのだ。すると、ケプナラがウィンジャマー親方に、

「だが、よくこの鯨狼は餌につきましたね」

「そこです。最初は、誰がやっても見向きもせんでした。ところが、相縁奇縁というかたった一人だけ、この先生に餌を食わせる女がいる。呼びましょう。オイ、牝河馬のマダムに、ここへ来るようにって」

と、やがて現われたのが意外や日本人。“Onobu-san, the Fatima”――すなわち大女おのぶサンという、重錘揚げの芸人だ。身長五尺九寸、体重三十五貫。大一番の丸髷に結って肉襦袢姿、それが三百ポンドもある大重錘をさしあげる、大和撫子ならぬ大和鬼蓮だ。

狂人の無電か

「おやおや、故国の人だというから、もうちっと好い男だと思ったら……。えっ、あんたがあの、探検屋折竹※(疑問符感嘆符、1-8-77)」

とこれが、折竹にひき合わされたおのぶサンの第一声。サーカスにいるだけにズケズケと言う。悪口、諧謔、駄洒落連発のおのぶサンは一目でわかる好人物らしい大年増。十歳で、故郷の広島をでてから三十六まで、足かけ二十六、七年をサーカス暮し。

このウィンジャマー曲馬団の幌馬車時代から、いま、野獣檻だけでも無蓋貨車に二十台という、大サーカスになるまで、浮沈を共にした、情にもろい気さくな性格は、いまや名実ともにこの一座の大姐御。