Japanische Klassiker mit Furigana
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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme
風雲も死闘もそのうえの事と、いよいよ二十台の犬橇が氷原を走りはじめたのである。
鯨狼の檻、その餌となる氷漬の魚の箱。ダブダブ揺ぐようなおのぶサンの肥躯も、今はエスキモーさながらに毛皮にくるまっている。
氷原と吹雪、氷河と峻嶮の登攀。奈翁のアルプス越えもかくやと思われるような、荷を吊りあげ、またおのぶサンを引きあげる一本ロープの曲芸。そのうち、落伍者が続出する有様。残ったのは、かなり名の知れた氷河研究者のザンベック、それに、ケプナラが気丈にも残っているが、もう、白人はこの二人だけにすぎない。しかも、寒気はますます厳しく、零下四十五度から六十度辺を上下している。
とこれは、七月末ごろのことだった。もう「悪魔の拇指」から百マイルも来たと思うあたりの、一隘路のなかで大吹雪におそわれた。
天地晦冥となり、砂を吹きつけるよう。くるくる中天に舞う濃淡の波に、前方の連嶺が見え隠れしていたのも、暫し。やがて、一面が幕のようになり、咽喉の奥までじいんと知覚が失せてくる。みると、橇犬どもは悄然と身をすくめ、寒さに嗅覚がにぶったのか、進もうとはしない。刃の風とまっ暗な雪のなかで、一同は立往生してしまった。