Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme

Aozora Bunko

暗い積雲と霧のむこうに、不侵地、「天母生上の雲湖」が、傲然と倨坐している。

「ここまでだ。前の三回とも、ここからは往けなかったのだ」ダネックが、感に耐えたような面持で、大氷河の開口を指さした。

「ホラ、あれがバダジャッカでも絶えず聴えていた音だよ。千の雪崩の音、魔神の咆哮と――僕が報告に書いたがね。それは、この開口をのぼった間近で合している二つの氷河の、右側のを吹きおろす大烈風だ。だから、たとえ僕らがこの開口をのぼっても、すぐに地獄の五丁目辺になってしまうのだ。ケルミッシュ君、ここが、人間力の限度、人文の極限だ。どうだ、ゆくかね」

「ゆこう」ケルミッシュは一瞬の躊躇もなく答えた。「往けるところまで……それは君にお願いすることだがね。僕は大烈風を衝いてもなお先きへ行く」

すると、ケティが無言のまま頷いた。で、とにかく、人間がゆける最後まで往こうと、人夫をそこに残し開口をのぼりはじめた。壁や裂け目から、氷の不思議な青い色がのぼっている。そして、それは一足ごとが生命の瀬、なんだか故郷が思われ、孤独の感が深くなってくる。やがて四人は、すぐ大烈風へでる岩陰にかたまって、この魔境をまもる大偉力をながめていた。