Japanische Klassiker mit Furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme
……そればかりではない、つい半月ほどまえに至はそれとなく、母の気をひいてみたことさえある。
――ねえおたあさん。なにかあまえることがあるとき、彼は幼いじぶん呼んだ呼び方で母を呼ぶ。――灰島にいい娘がいるのですがねえ、十八だそうですが、気性のしっかりした、利口そうな娘なんですよ。
――なんだえ至。とそのとき母親はあきれたように云った。――灰島の幸枝さんならおまえ知っている筈ではないか、去年まで家へ琴を習いに来ておいでだったではないの。
――へえぇ、家へ来ていたんですか。
至はびっくりしたように眼を瞠った。母親は琴に堪能で、以前から家中の娘たちに手ほどきをしてやっていた、去年ふとしたことで指を痛めてからは止めているが、それまでは常に十四五人の娘たちが稽古に来ていたのである。然しそのなかに幸枝がいたことなどは、むろん至は気付きもしなかった。――なんだ、そんな縁があったのか。それならいざとなれば話は楽に出来ると考えていたのである。
それが今日になって、思いがけぬところから根こそぎ覆えされたのだ。聞かないまえならどうにでもなる、然しああして頼まれてしまったうえはもうすべては終りだ。