Japanische Klassiker mit Furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme
と息子の眼を見究わめるようにした。
「いま帰ってゆきました」
「おまえ、……なにか話があったろうね」
「いやなにも」至はじっと水面を覓めていた、「べつになにも……」
母親はなにか云いたそうであったが、思い諦めた風に、幸枝の後を追ってゆこうとした。……そのときである、四五間下の方で烈しい水音が起り、「ぎゃあ」という子供の悲鳴が千切れたように聞えた。
「あ、誰か墜ちたのではないか、至」
「見て来ます」至は立って走っていった。
四歳あまりの子供が、ひょいと水面に頭を出し、もういちど、水を含んだ悲鳴をあげると、すぐにまた流のなかへ沈むのが見えた。「早く、至や、早く」追いついて来た母親が叫ぶあいだに、手早く裸になった至は、流れの速さを計りながらさっと水へとび込んだ。殆ど同じとき、向うの枯蘆のあいだから、紙のように白い顔をした武家風の若い女が一人、髪を振乱し、喉をふり絞るような叫び声をあげながら、裾前の紊れるのにも気づかぬようすでけんめいに駈けつけて来た。「ああ、坊が、坊が、ああ」と狂気のようにそのまま水際へ下りようとする、夏女は危うくそれを抱止めた。「お待ちなさい、もう大丈夫です」