Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
Lesen Sie 人間豹 (にんげんひょう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.989 Zeichen · 311 Bildschirme
狂人は、ころがっていたウィスキーの瓶を取って、こぼれ残りの酒をグラスにつぐと、
「弘ちゃんのために、プロージット!」
と、叫んで、それをグッと飲みほして、長い舌をペロペロと舐めまわした。異様に長いまっ赤な舌であった。だが彼の舌は、長いばかりではなかった。赤いばかりではなかった。そのほんとうの恐ろしさは、やがて、彼がビーフステーキを口に持っていった時に、ハッキリとわかった。
それは決して、酔った神谷の幻覚ではなかった。弘ちゃんともう一人のウエートレスも、ちゃんとそれに気づいていて、あとでまっ青になって話し合ったことであった。
恩田はフォークで、ポタポタと赤い血のしたたる、厚ぼったい牛肉の一片をつき刺すと、口をグワッとひらいて、赤い舌をヘラヘラと動かして、それをさもうまそうにたべたのだが、その時、敏捷に動く舌の表面が、電燈の光を受けてまざまざと眺められた。
ああ、あれが人間の舌であろうか。まっ赤な肉の表面に、針を植えたような一面のささくれ。それが、舌を動かすたびに、風に吹かれた草むらの感じで、サーッと波打って逆立つのだ。決して人類の舌ではない。猫属の舌だ。