Japanische Klassiker mit Furigana
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たにんのなつ
他人の夏
山川 方夫
Lesen Sie 他人の夏 (たにんのなつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 3.115 Zeichen · 7 Bildschirme
「銛で打ったの?」
「そうです。とても重い銛なんです」
「ずいぶん、原始的ね」女はひきつったような声で笑った。「で、お父さんは?」
「死にました。去年」
女はだまった。ゆっくりとその女のそばをまわりながら、彼はいった。
「……あなたは、自殺するつもりですか?」
喘ぐ呼吸が聞こえ、女は反抗的に答えた。
「ほっといてよ。……あなたには、関係ないことだわ」
「べつに、やめなさい、っていうつもりじゃないんですよ」
女は、ヒステリックにいった。
「からかうの? 軽蔑しているのね、私を。子どものくせに」
あわてて、慎一はいった。
「ちがいます。親父がぼくにいったんです。死のうとしている人間を、軽蔑しちゃいけない。どんな人間にも、その人なりの苦労や、正義がある。その人だけの生き甲斐ってやつがある。そいつは、他の人間には、絶対にわかりっこないんだ、って」
女は無言だった。遠く、波打ち際で砕ける波の音がしていた。
「人間には、他の人間のこと、ことにその生きるか死ぬかっていう肝心のことなんかは、決してわかりっこないんだ、人間は、だれでもそのことに耐えなくちゃいけないんだ、って。……だから、目の前で人間が死のうとしても、それをとめちゃいけない。