Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
そうして、人面疽の女の顔は、母親の顔ででもあるかのように、慕わしく恋しく思われる」
葉之助は茫然と坐ったままで動こうともしない。
一五
ここで物語は一変する。
大正十三年の今日でも、甲信の人達は信じ切っているが、武田信玄の死骸は、楯無しの鎧に日の丸の旗、諏訪法性の冑をもって、いとも厳重に装われ、厚い石の柩に入れられ、諏訪湖の底に埋められてあり、諏訪明神がその柩を加護しているということである。
これはどうやら歴史上から見ても、真実のことのように思われる。その証拠には近古史談に次のような史詩が掲載されてある。
驚倒す暗中銃丸跳るを、野田城上笛声寒し、誰か知らん七十二の疑塚、若かず一棺湖底の安きに
最後の二句を解釈すると、昔支那に悪王があって、死後塚の発かれんことを恐れ、七十二個の贋塚を作ったが、それでもとうとう発かれてしまった。武田信玄はそんなことはせずに、死骸を湖底に埋めさせた。この方がどんなに安心だか知れない――つまりこういう意味なのである。
いかにもこれは七十二の疑塚より確かに安心には相違ないが、しかし絶対に安心とは云えない。諏訪湖の水の乾く時が来たら、死骸は石棺のまま現われなければならない。