Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
にわかに心が掻き乱れ坐っていることが出来なくなった。
で、戸を開けて外へ出た。秋の終り冬の初めの、それは名月の夜であったが、彼はフラフラと歩いて行った。
主水町を過ぎ片羽通りを通り、大津町まで来た時であったが、一個黒衣の大入道が彼の前を歩いて行った。
どうしたものかその入道を見ると、葉之助はゾッと悪寒を感じた。
「いよいよ現われたな黒法師めが! こいつ悪玉に相違ない!」こう思ったからであった。
ムラムラと殺気が萌して来た。で彼は足音を盗み、そっと入道へ近寄った。
声も掛けず抜き打ちに背後からザックリ斬り付けたのはその次の瞬間のことであった。と、ワッという悲鳴が起こり、静かな夜気を顫わせたが、見れば地上に一人の老人が、左の肩から右の胴まで物の見事に割り付けられ、朱に染まって斃れていた。
「や、これは黒法師ではない。これは城下の町人だ」
葉之助はハッと仰天したが、今となってはどうすることも出来ない。
しかるにここに奇怪な事が彼の心中に湧き起こった。……老人を斬った瞬間に、彼の心中にトグロを巻いていた不安と焦燥が消えたことである。……彼の頭は玲瓏と澄み、形容に絶した快感がそれと同時に油然と湧いた。