Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じゅうしまつ

十姉妹

山本 勝治

Lesen Sie 十姉妹 (じゅうしまつ) von 山本 勝治 (やまもとかつじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.110 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

この新らしい薪であるべき事柄が、何時の間にか石綿の様に燃えなくなった以上に、却って自分を卑怯にする鞭の役目を努めるとは、前線に立つ者にとって致命傷だと思った。だが、この理智に頓着なく慎作の心は懐疑に燻って羊の様に繊弱なものになる一方であった。理智と思想に於てはまだ、決して曇っていないと確信しているだけに、この脆弱な感情の泥沼から匍いあがろうとする焦燥は一倍強かったが、次々と周囲に起る事柄が反抗を薄めて、不可抗力に裾をかまれた様に動きがとれないのだった。

そうだ。第一に暗い一家の現在が、慎作をひしぐ力の最大なものに違いはなかった。

前年からの借金が抜けない上に、養蚕の不成功に次ぐこの大旱だった。家産を傾むけた正直一途というものよりほかに、何の才能も持合わせない父は、目前の仕事を唯がむしゃらにするより思案が無かった。日向を追っかけ廻る様になっても、まだ維新当時、区長という大役の下命された名誉を、晩酌の酔と共に吹聴することを忘れない祖父は、去年の春、祖父そっくりの頑固者だった兄が死ぬと共に、飾るべき何物もなく、只、ストーヴのように温かい資本家を憎む思想と感情とを土産に、顔を蒼くし髪を長くして帰郷するやいなや、農民運動に寧日ない慎作を目の敵にして、事々に小姑の様な執拗さで盾付いた。