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Japanische Klassiker mit Furigana

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クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

「何処でも入れる――が、お前は危ない、帰るがよい」

余吾之介は越せば越せる低い塀を見ながら、お秋を顧みてこう言うのでした。

「いえ、私は余吾之介様の勇ましいお働きが見たいのでございます」

「危ないぞ」

「大丈夫、危いところへは参りません」

「――――」

余吾之介はその上争いませんでした。たった今日初めて逢ったばかりですが、この女の異常な物好みが、余吾之介にもよく解るような気がしたのです。

塀は六尺そこそこ、手を掛けて何んの苦もなく飛越すと、厳重に締った木戸を開けて、

「入れ」

お秋を引入れました。

幸い月は隠れて、冷々と靄をこめた冷たい闇は、忍ぶ者には跳えたような晩です。

「余吾之介様」

「――大きな声を出して、中の人数をおびき出してくれ。人が出たら、木立の中に隠れるのだ、俺はその間に家の中へ入る」

「――――」

お秋は黙ってうなずきました。女に取っては思いの外の大役ですが、お秋は見ん事やりとげて見せる積りでしょう、何んのこだわりもなく引受けると、余吾之介の側を少し離れて、

「火事だ、火事だ、火事、火事」

打ちこわしにならない程に呶鳴って、サッと深い木立の中に身を隠しました。