Japanische Klassiker mit Furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme
「それ逃すなッ」
追いすがる潮のような人数。
「あッ」
余吾之介は張り渡した縄に足を取られて、思わず闇の中にもんどり打ちました。
「しめたッ」
追い冠さる二三人、拝み討に振り冠ったのが、そのまま屏風のように前へのめりました。大地に這った余吾之介は、倒れながらも横に払って、二三人の向う脛を一ぺんに刈って了ったのです。
「わッ」
恐ろしい悲鳴、それを背後に聞いて、余吾之介は塀の上へ攀じ上りました。
外も一パイの人数、何時の間に手が廻ったか、真に水も漏らさぬ警備です。
それから何処をどう逃げ廻ったか、余吾之介は土手の闇を拾って、関屋から、綾瀬川の方へ出てしまいました。
山野辺一家の家来や奉公人なら多寡が知れておりますが、追手の半分以上は町奉行から差廻された、本職の捕方と判ると、余吾之介もさすがに安き心はなかったのです。
木母寺の方も、堀切道も塞がれて、余吾之介は川へ飛びこむより外に逃げ道がなくなってしまいました。
が、十二月二十日過ぎの夜の寒さ、水に退路を求められる時候でもなく、その上困ったことに、山形城に育った余吾之介は、武芸百般暗きはない中にも、泳ぎの方だけは、まことに不得手だったのです。