Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちよこ(さん)

千世子(三)

宮本 百合子

Lesen Sie 千世子(三) (ちよこ(さん)) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.906 Zeichen · 54 Bildschirme

Aozora Bunko

「何でもないんです。

けれどもね、今まで、あんまり下らない話をして居たのに気がついてね、

何だか馬鹿らしくなった」

「してしまった話をどうする事も出来ないじゃあありませんか」

篤は大きな声で話しながら笑った。

千世子にはほんとうの真面目な言葉としてそれが響いた。

「ほんとうですねえ。

そう云いながらも千世子は考える様な目つきをして居た。

「ほんとうにそうだ!」

つぶやく様に云った千世子の心の底に重いものが産れて来た。

よろける様にして行ってピアノのふたをあけた。

そしてたったままシューベルトの子守唄を弾いた。

しとやかにゆるい諧調は千世子の心をふんわりと抱えて揺籃の裡に居る様な気持にした。

篤はしずかに歌をつけた。

低いゆーらりゆーらりとした歌に千世子は涙をさそわれる様な心に柔さが出て来た。

ほんとうに好い曲ですね。

千世子は幾度も幾度も、繰返し繰返して「ふた」をしながら後に居る篤に云った。

ああ、貴方に不思議な気持のする音をきかせてあげましょう。

した蓋をわざわざ開けて千世子は篤の方を見ながらCDの音を一度に出した。

完全四度の音程のその音は三角派の絵の様に奇怪なそしてどっかに心安い安らかな思いのこもった響でその余韻には鋭い皮肉がふくまれていかにも官能的な音であった。