Japanische Klassiker mit Furigana
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ちどり
千鳥
鈴木 三重吉
Lesen Sie 千鳥 (ちどり) von 鈴木 三重吉 (すずきみえきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.951 Zeichen · 41 Bildschirme
小さな鮒かしらたくさんいますわ」と、藤さんは眩しそうにこちらを見る。
「だって下駄がないじゃありませんか」
「あたしだって足袋のままですわ」
自分もそれなり降りて花床を跨ぐ。はかなげに咲き残った、何とかいう花に裾が触れて、花弁の白いのがはらはらと散る。庭は一面に裏枯れた芝生である。離れの中二階の横に松が一叢生えている。女松の大きいのが二本ある。その中に小さな水の溜りがある。すべてこの宅地を開く時に自然のままを残したのである。
藤さんは、水のそばの、苔の被った石の上に踞んでいる。水ぎわにちらほらと三葉四葉ついた櫨の実生えが、真赤な色に染っている。自分が近づけば、水の面が小砂を投げたように痺れを打つ。
「おや、みんな沈みました」と藤さんがいう。自分は、水を隔てて斜に向き合って芝生に踞む。手を延ばすなら、藤さんの膝にかろうじて届くのである。水は薄黒く濁っていれど、藤さんの翳す袂の色を宿している。自分の姿は黒く写って、松の幹の影に切られる。
「また浮きますよ」と藤さんがいう。指すところをじっと見守っていると、底の水苔を味噌汁のように煽てて、幽かな色の、小さな鮒子がむらむらと浮き上る。