Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちどり

千鳥

鈴木 三重吉

Lesen Sie 千鳥 (ちどり) von 鈴木 三重吉 (すずきみえきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.951 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

と、ふと思わぬところにもう一つ白帆がある。かなたの山の曲り角に、靄に薄れて白帆が行く。目の迷いかと眸を凝らしたが、やっぱり帆である。しかし藤さんの船はぜひとも前からの白帆と定めたい。遠い分はよく見えぬ。そして、間もなく靄の中に消えてしまうのである。よく見えて永く消えないのが藤さんの船でなければならぬ。

はらはらと風もないのに松葉が降る。方々の機の音が遠くの虫を聞くようである。自分は足もとのわが宿を見下す。宿は小鳥の逃げた空籠のようである。離れの屋根には木の葉が一面に積って朽ちている。物置の屋根裏で鳩がぽうぽうと啼いている。目の前の枯枝から女郎蜘蛛が下る。手を上げて祓い落そうとすると、蜘蛛はすらすらと枝へ帰る。この時袂の貝殻ががさと鳴る。今までとんと忘れていたけれど、もうこの貝殻も持っていたってつまらないと思って、一つずつ出しては離れの屋根を目がけて投げつける。屋根へ届くのは一つもない。みんな途中へ落ちる。落ちて木の葉が幽かに鳴る。今のは何とも答がなかったと思うと、しばらくして思いだしたようにばさというのがある。目を閉じて横の方へうんと投げて、どの見当で音がするか当ててみる。