Japanische Klassiker mit Furigana
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ちどり
千鳥
鈴木 三重吉
Lesen Sie 千鳥 (ちどり) von 鈴木 三重吉 (すずきみえきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.951 Zeichen · 41 Bildschirme
自分は袖を翳して何だかほろりとなった。
しかし自分は藤さんについてはついにこれだけしか知らないのである。ああして不意に帰ったのはどういう訳であったのか、それさえとうと聞かないずくであった。その後どこにどうしているのか、それも知らない。何にも知らない。
というとちょっと合点が行かぬかもしれぬけれど、それは自分がわざわざ心配してこんな風にしてしまったのである。千鳥の話が大切なからである。千鳥の話とは、唖のお長の手枕にはじまって、絵に描いた女が自分に近よって、狐が鼬ほどになって、更紗の蒲団の花が淀んで、鮒が沈んで針が埋まって、下駄の緒が切れて女郎蜘蛛が下って、それから机の抽斗から片袖が出た、その二日の記憶である。自分は袖を膝の上に載せたまま、暗くなるまでじっと坐っていろいろな思いにくれた末、一番しまいにこう考えた。話はただこの二日で終らなければおもしろくない。跡へ尾を曳いてはもうつまらないと考えた。ある西の国の小島の宿りにて、名を藤さんという若い女に会った。女は水よりも淡き二日の語らいに、片袖を形見に残して知らぬ間にいなくなってしまった。去ってどうしたのか分らぬ。