Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
その火花の明りで、ちらっと見た夫の顔、小太郎の顔。七瀬は、それを深く、強く、自分の眼の底に、胸の奥に、懐の中に取っておきたいように、感じた。
提灯は、すぐついた。こんなところを、余り人に見せたくないと思っていたが、闇の中で、このまま別れることも、八郎太には、流石に出来なかった。
綱手は、深雪に助けられて、旅支度をしていた。二人とも、灯がつくと涙の顔を外向けた。八郎太は、二人の娘の顔をちらっと見たが、平素のように、何を泣く、と叱らなかった。
七瀬は、手甲、脚絆までつけて、いくらか蒼白めた顔を引き締めて、夫の眼をじっと見た。いつもの七瀬よりは、美しく見えた。小太郎は、親子の生別よりも、反対党に対する憤りでいっぱいだった。彼は、腕を組んで、胸を押えていたが、悲しいものが、胸の底に淀んでいて、時々、押え切れないで湧き上って来かけた。
七瀬は、何をいっていいか、判らなかった。何かに、せき立てられるようで、いいたい事がいっぱい胸の中にあるような気がしたが、その何れを、何ういっていいのか――苛立たしさと悲しさとが、いいたいと思うことを、突きのけて、胸いっぱいにこみ上げてきた。