Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
油断せぬに、しくはござりませぬ。典医、侍女の方は、某が、見張りますから、夜詰の人に、政岡如き女を――」
と、すすめて、そして、七瀬が、選まれることになったのであった。病間夜詰と、きまった時、仙波八郎太は
「寛之助様は御世継ぎじゃで、もしものことが、おありなされたら、ここの敷居を跨げると思うな」
と、云い渡した。小身者の仙波として、七瀬が首尾よく勤めたなら、出世の緒をつかんだことになるし、他人に代った験が無かったなら、面目として、女房を、そのままには捨て置けなかった。
「心して、勤めまする」
と、答えて来たが、夜の詰をして、三日目の今夜は、いつになく、気が滅入って、何うしたのか、怯け心が出て来た。
灯が、暗いようなので、心を切ろうと、じっと、灯を見つめながら、手を延そうとすると、部屋中が、急に薄暗くなって、天井が、壁が、畳が、襖が、四方上下から、自分を包みに来るように感じた。
七瀬は、脚下から寒さに襲われた。はっとして、手を引くと、心を落ちつけようと、努力しながら、四方を見廻した。
床の間には重豪の編輯した「成形図説」の入った大きい木の函があったし、洋式鉄砲、香炉、掛物の万国地図。