Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
罪の無い、無邪気な幼児が、たった一人で、乳母の力も、医者の力も、およばないところで、泣きながら、苦しめられながら、怯えながら、死と悪闘している姿を想像すると、斉彬は
「若」
と、叫んで、涙ぐんだ。血管が青く透いて見える手、せわしく呼吸に喘いでいる落ちくぼんだ胸、愛と、聡明とで黒曜石の如く輝いていた眼は、死に濁されて、どんよりと、細く白眼を見開いているだけであった。
「回復の望みは――」
「はっ」
と、いって、三人の医者は、頭を下げたままで、何んとも答えなかった。見ない前の心強さが、寛之助のいじらしい姿に、打ちくだかれて、斉彬は、幾度自分の名を呼び、自分を見たく思ったかと思うと、熱い悲しみの球のようなものが、胸から、頭の中までこみ上げて来た。
「痩せたのう」
と、いって、斉彬は、意識のない寛之助の、手を握った。掌へ感じたのは、熱と骨とだけであった。英姫は、それを見ると、袖を口へ当てて泣き入った。
(せめて――せめて正気のある間に、そうしてやって下さったなら)
二日前英姫の懐の中で、熱っぽい、だるそうな目をしながら
「お父は?」
と、聞いた時、幼児は、それが父に逢う最後だと感じていたにちがいなかった。