Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
じっと、呼吸を殺しているより外に、仕方が無かった。
(侍を呼びやがるかしら――)
と、感じると、見えぬ闇に、槍が、手が、刀が、迫って来るように思えた。このまま、鼠の如く縮み上っているか、鹿の如く逃げ出すか?――だが、庄吉には、折角、手をかけた手函を捨てておくことは、男の意地として、出来なかった。
(まさか、調所の爺め、闇の中で眼が見える訳じゃあるめえし!)
手函を持ったまま、じりじり後へ下りかけた。だが、いつ、調所が声を立てて、侍を呼ばんにも限らないと考えると、もう、じっとしておれなかった。
(この中のものさえ掴んで逃げりゃあいいんだ。中のものを――)
調所は、そのまま、音のしないのを知ると、脇差を突き出して、じりじり床の間の方へ寄って来た。
(刺客ではないらしい、金をほしさの枕探しか――それとも、密貿易の書類を盗みに来た奴か――)
調所には、この判断がつかなかった。ただ、曲者は一人で、まだ床の間にいるらしい、とだけしか判らなかった。
(こそ泥なら?――侍を呼び立てて、宿中を起すのは、武士として恥だ。書類を目掛けている奴なら?――然し、そんな奴は、いない筈だ――こそ泥であろう。