Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
そして、兄様の、何かの足しに致します。これが、綱手として、今、兄様にお報いできる、たった一つのことでござります)
と、曇った胸で、云ってみた。そして、月丸へは
(妾の心は変りませぬ。櫛の有無で、決して変りは致しませぬ。貴下も、妾の、兄へ尽すこの心が判って下さったなら、叱りはなされますまい。綱手の、今の辛い心を、察して、赦して下さりませ)
と、詫びた。
下女中の、持って戻って来た金に、己の金のありったけを加えて、綱手は、蔵屋敷の門を出た。
小太郎の宿は、横堀の舟着場所の一つになっている高麗橋の川沿いの家であった。
橋の上へ来ると、早船は、目印の旗を立て、伏見通いのは、大きい体を横づけにして、川岸いっぱいに、幾十艘も並んでいた。
柳の植わった岸には、木の下に、大きい荷がいくつも捨ててあるし、岸から歩み板が、幾十枚もかかっていて、船頭が、旅客が、口々にざわめいていた。
いろいろの講中の札のかかった、軒の低い、だが、横に広い、宿の暗い土間へ入ると、忙がしそうに、家中を往来していた女中が、番頭が、一時に、綱手を見た。
「お着きやす」
と、云って、一人の番頭が出て来た。