Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

と、思うと、怒りながら、恨みながら、戻って来て欲しい気もした。溝板を踏む足音が聞えると

(戻った?――何う云ってやろう)

と、考えたが、いつも、ちがった長屋の他の人の足音であった。富士春は、起きたままで、御飯も食べないで、寝不足の、重い頭と、鉛のように沈んだ心とを、持て余しながら、もう、小半日も、こうして、俯向いていた。

足音が、格子の前で止まった。富士春は、はっとして、顔を上げたが、すぐ、元の通りになって、何んなに、怒っているか? 恋しがっていたか? 悄然としているこの姿を見せてやろう、と、額へ手を当てた時、足音が、土間の中へ入って来た。

(庄吉ではないらしい)

と、思うと、失望と、うるささとで、そのまま、見向きもしなかった。入って来た男が、そのまま黙って立っているらしく、足音も、格子の音もしなかった。

「誰?」

富士春は、俯向いたまま、咎めるように聞いた。

「俺だ」

聞いたことのない声であった。

「誰?――何んの御用?」

富士春が顔を上げると、土間の提灯の下に、頬冠りをした町人風の男が、立っていた。そして

「富士春、そちゃ、見忘れたか?」

下手な仮声であった。