Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
人々は、一斉に、頭を下げて、聞き入った。
白雪と消えてゆく身にも思ふぞよ
曇らぬ空の月の晴れよと
二度、繰返して
「御一同、さらば」
と、云った。人々は、微かに、肌を顫わせながら、軽い恐怖と、好奇心とに、身体を固くして、じっと、見つめていた。一郎右衛門は、肩衣を脱いで、袴を、ぐっと下へ押し下げた。そして、暫く、左の手で腹をもんでいたが、膝の前の、鎧通を取って、鞘を払った。人々が、時々、軽い咳をするだけで、何んの物音もしなかった。
一郎右衛門は、鎧通を、白い布で捲いて、三寸程刀尖を出した。そして、左の腕を捲って、二の腕を、軽く一寸程切った。顔は、すっかり、蒼白になっていて、手が微かに、顫えていた。一郎右衛門は、布で血を拭いて、袖をおろすと、左手で、又、腹を撫でた。
暫く、そうしてから、腹のたるんでいる皮を、左手へ、ぐっと、引寄せると同時に、刀尖を、その指の際へ当てて、肩で、大きい呼吸をした。一郎右衛門の眼も、一座の人々の眼も、異様に、光ってきた。
左手の指先で、刀尖を、ここと思うところへ当てて、一郎右衛門は、眼を閉じた。唾をのんだ。又、大きい呼吸をした。