Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
何処を歩いているかさえ判らなかった。
(陰謀が、自分の手で暴露されたなら、斉彬公は、何んなに喜ばれるだろうか? あの柔和な眼で、あの静かな口調で、何を仰しゃるだろう?――そして、父は、恐らく、自分が手柄を立てたよりも、喜ぶであろうし、母は、父よりも嬉しがって、きっと、涙をためるにちがいない。二人の妹は――)
小太郎は、次々に、いろいろのことを空想しながら、木箱を、小脇に抱えて、小走りに、夜の街を急いだ。ふっと
(然し、箱の中に、何も証拠品が入ってなかったら?)
と、不安になったりしたが、ことこと中で音がしているし、病室の床下にあったのだし、疑う余地はなかった。
将監橋を渡ると、右が、戸田采女、左が遠山美濃守の邸で、その右に、藩邸が、黒々と静まり返っていた。八時に、大門を閉して、通行禁止になるのが、一般武家邸の風であったから、悪所通いをする若者などは、塀を乗越えて出入した。益満など、その大将株であった。
小太郎は、その塀越しの出入口と決まっている切石の立ったところから、攀じ登って、邸の中へ入った。長屋の入口で、ことこと戸を叩くと、すぐ、足音がした。
(未だ、寝ないで、自分の帰りを待っているのだ)