Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
「月丸っ」
小太郎が、叫んだ。
「無念」
低く月丸が呟いて――だが、上げかけた頭を、又、垂れてしまった。義観が、背後から、抱いたままで
「月丸、自裁せい。な、武士らしく、自裁せい」
と、耳のところで、叫んだ。月丸は、袴の地の判らぬくらいに、血を流し、血をなすりつけている腰の辺へ、手をやった。手は、顫えてもいたし、もう、感覚がないらしく、腰の辺りで、ただ、指が、動いているだけであった。
「刀か」
答えが無かった。
「刀か」
肩で大きい呼吸をすると、指が動かなくなった。だが、眼を細く開けた。然し、もう、瞳は濁ってしまっていて、視点が乱れ、力も、光も無くなっていた。
今まで、兇猛な獣の眼のように光った眼であったが、眼が、その光を無くすると共に、脣も、鼻も、眉も、おとなしくなってしまった。血に染んでいるだけで、死に行く人の平和さが、顔中に、現れていた。
小太郎は、それを見ると、ずかずかと、近づいて、深雪が、月丸を突き刺した脇差を拾い上げると、月丸の前に、しゃがんで
「綱手のところへ、行け」
と、叫んだ。月丸は、眼をしばたたきながら、瞳の乱れた眼で、何かを凝視するように、じっと、上の方を見て、微かに、笑顔をした。