Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
「も、戻っていらないよ」
富士春は、こう云うと、襖の紙を、引き破った。そして、二階へ、足音荒く上ると、瀬戸物の毀れる音がした。
「うるさくなりゃあ、斬ってしまえ。それから」
と、一人が、叫んで、肱を張った。
富士春は、湯呑を抛げつけて、こわしたが、それだけで、身体の中、胸の中、頭の中いっぱいに、湧き返っているものが、すっかり、湯呑と一緒に、こわれ飛んだとは、感じなかった。まだ、固いものがつかえていたり、口惜しさが固まっていたり――
(何うしてくれよう、畜生っ)
と、思うと、袖を噛んで、引き裂いてみた。下では、浪人が、何かに喜んでいるらしく、笑い声が、爆笑が、どっと起った。
「何が、可笑しいんだいっ」
富士春は、上り口へ、首を延して叫んだ。
(三十を越して、何うなって行くのだろう)
と、思うと、追っかけられるような焦躁と、不意に、脚下に穴でも空きそうな不安とを感じた。化粧をしていると
(未だ、これでも――)
と、思う時もあったが、鏡へ、顔を近づけると、もう、眼の四辺に、小皺が出て、肌にしみが現れていた。
(妾、何を悪いことをしたい)
と、富士春は、世間へ、啖呵を切ってみた。