Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
その瞬間、小太郎の前に、きらっと、閃くものが、掠めて、小太郎は、一足退っていた。手に、刀があった。
山内へ振向いた一人が、その掠めた閃きに、本能的に、身を躱して、一足退ると、自分の横に、立っている一人が、頭から、赤黒い血を、顔一面に――何うして、そんなに、流れたかとおもうくらいに、血にそまりつつ、よろめき、よろつき、両手で、頭を押えて――眼だけを白く剥き出しつつ、だが、眼瞼に、血をためて、頭を先に、胸を先に、よろめいて、歩き出すと、二三歩で、顔を歪めて、草の上へ倒れるのを見た。唸り声も、叫び声もしなかった。
「小太郎」
その斬られた男の跡へ、山内が立っていた。一人は、小太郎の早業に、手が、脚が、指が――そして、頭の中も、固くなってしまった。
(敵わない)
と、いう感じが、全身に恐怖を与えてしまった。一瞬で、血塗れになった朋輩で、心も、身体も、冷えてしまった。小太郎は、黙って、刀を構え直した。そして、いくらか、高いところに立っている位置を、少しずつ、低いところへ移って、山内と同じ高さになった。
「受けられるか」
小太郎は、叡山の上、伝教大師の廟の石垣へ、自分を追いつめて、のしかかって来た時の山内の顔を思い出した。