Japanische Klassiker mit Furigana
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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
Lesen Sie 古今集巻之五 (こきんしゅうまきのご) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.482 Zeichen · 43 Bildschirme
主計は無感動な眼で、そこにある歌集を眺めていた。それは古今和歌集巻之五であった。
「歌の中にはこれと思い当るものがなかったので、そのまま戸納の中へ入れておいた」と五郎太は続けた、「それが、――梅雨のあけたあとでふと取り出してみると、湿気のために表装が剥げていて、裏表紙の見返しの下に、男の名が書いてあるのをみつけた」
ああそうだ、と主計は心の中で思った。あの歌はこの歌集の中にあったのだ、秋の野におく露は一と色であるのに、木の葉や草をちぢの色に染める、という意味のものであった。小光が「うたってくれ」とせがんだな、と主計は思った。
「手紙には書かなかったが、男の名はそこにある」と五郎太は続けていった、「その男と杉江どのとは、松崎塾からの知りあいで、歌集は男から杉江どのに贈ったものだ」
これがありのままの事実だ、と五郎太は云い、そこでひらき直るように、じっと主計の眼をみつめた。
「これがおれのしらべた全部だ」と五郎太は云った、「男の名を読むか、読まずに捨てるかは永井の自由だ、どう始末するかも、永井の思案に任せる、ただ一つ云っておくが、――おれがこれだけのことを隠さずに話したのは、永井がどういう人間であるかを、信じているためだ、これからどんな処置をとるかわからないが、おれが永井を信じている、ということだけは忘れないで