Japanische Klassiker mit Furigana
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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
Lesen Sie 古今集巻之五 (こきんしゅうまきのご) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.482 Zeichen · 43 Bildschirme
短刀が左の乳房の下に柄まで突刺さってい、その柄を両手でしっかりと握っていた。みごとに心臓を貫いているから即死だったろう、血も短刀の周囲と、夜具の一部を少し汚しているだけであった。
「みつけたのは召使のたみだ」と主計が云った、「いつもの時刻が過ぎても起きないので、起こしに来てみつけたのだそうだ」
「どうして」と五郎太が訊いた、「――理由はなんだ」
「わからない」と主計は答えた。
五郎太は主計を見あげた。
理由はまったくわからない、遺書らしい物もない、と主計は云った。五郎太は死躰に眼を戻し、主計は話を続けた。五郎太を迎えにやったあと、主計はすっかりしらべてみた。死ぬ覚悟はまえからきめていたらしい、長持も葛籠も、箪笥、小箪笥などもきちんと整理され、たみに与えると書いた包の中にも、数点の衣類と髪道具があっただけで、手文庫や文箱、鏡筥の中から机のまわりまで、おどろくほどきれいに始末してあり、出入り商人の帳面と家計の覚書以外には、一通の手紙さえ残ってはいなかった。
「五日や十日のことではない」と主計は途方にくれたように云った、「これだけ身のまわりを片づけるにはかなりな日数がかかっている筈だ、しかし、そのあいだおれはなに一つ気づかずにいたんだ」